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2015年5月13日 (水)

アンダーマイニング効果について 

 人はだれでも、幼児の頃は何にでも興味をもち、旺盛な好奇心を示します。

それが、小学校に入学後、急激に好奇心や探求心を失ってしまうのはどうしてでしょうか。

  このことは、学習意欲の向上に興味を持っている私の頭の片隅にいつも引っかかっていた事でした。

〈それは恐らく、学校という組織に入るといわゆる「勉強」になってしまうからだろう〉と漠然と考えていました。

学校へ入れば、自分の興味を覚えることだけを選択してやる訳にはいかなくなります。

自分にとって苦手な事、嫌いな事もしなくてはいけません。 ここに、どうしても「強制」という事態が生じてきます。

この「強制」こそが、「やらされるという感情」こそが、好奇心や探求心を失う最大の原因なのではないか、そのように思っていました。

そんな時、ある教育心理学に関する本を読んでいますと、ふとこの「アンダーマイニング効果」という言葉が目に飛び込んできました。

この言葉の意味は、ある行為が学習者の内発的学習意欲を低下させてしまう事を指しています。

そして、この「アンダーマイニング効果」と「報酬」との関係を研究したアメリカのデシ先生の研究を興味深く拝読した事でした。

当時のアメリカ心理学会では、「報酬」こそが人間の学習を成立させる最たるものであると考えられていました。

しかし、この事に疑問を持ったデシ先生は「報酬」によって、子どもの内発的動機づけは逆に低下してしまう事を、巧みな心理学実験で実証してしまいました。

これは大学生を被験者にして、ソマパズルというおもしろいブロックを使って行う実験なのですが、その詳細は紙面の都合上、割愛します。

「金銭」や「品物」という報酬を与える事によって、子供の学習意欲は逆に低下してしまう、この事は当時のアメリカの常識をくつがえすもので、アメリカの心理学会に衝撃をもたらしました。

さらに、他の研究者達によって、今度は幼児を対象にした実験も行われました。

  この実験によって、「アンダーマイニング効果」を生み出すものが、報酬そのものというより、幼児が報酬を「期待する」ことに起因する事も明らかにされました。

また、「ほめ言葉」のような言語的報酬は「アンダーマイニング効果」を引き起こしにくい事が予想されます。

  ただ、子どもが、まったく学習意欲がない時には、報酬の効果はある程度認められますが、そこには非常に危険が伴います。

それは、どうしても報酬で「やらされている」という感覚が生じるからです。

そして、学習意欲が向上してきたときに、果たして、報酬を与えることをやめる事ができるでしょうか。

人間は、過去の成功体験から、なかなか脱出できないものです。

つい、深く考えずに慣習的に安易な方へと流されてしまいます。

「報酬」はいわば、「馬の鼻先のにんじん」です。

「報酬」でつる事は厳しく言えば、子どもを家畜並に扱う事であり、子どもの人格の尊厳を結果として傷つける事になります。

「人間は何のために学ぶのか」 私は機会あるごとに子ども達に言っています。

「それは、自分の未来を切り拓くため、そして、結果として社会に貢献するためなんだ」と。「自分の未来は自分で切り拓く」、この心意気を私はどうしても子ども達に培って欲しいです。そういう気持ちが子どもの心の内に芽生えた時、ハングリーさを失ったこの現代においても、たくましく生きていく事は十分可能です。

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